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エネファームは、ガスを利用してお湯や電気を作り出す、エネルギー効率のいい給湯機器です。光熱費の削減効果に期待して導入する方も少なくありません。
しかし、エネファームを導入しても、ガス代をはじめとした光熱費が高くなるケースもあるため注意が必要です。
そこで今回は、エネファームを導入した際のガス代や運用上の注意点を詳しく紹介します。
ガスを利用して発電するエネファームの基本的な仕組みとメリット
ガスを利用して発電するエネファームは効率のいい発電方法ともいわれますが、エネファームのメリットはエネルギーの節約だけではなく、停電時の予備インフラになる点がエネファームの大きなメリットです。
エネファームの基本的な仕組み
エネファームは、一般家庭で使われている都市ガスやプロパンガスでお湯をつくる際に、一緒に発電もできる自家発電機能付きの給湯設備です。発電をする「燃料電池ユニット」と、沸かしたお湯をためる「貯湯タンク」で構成されています。燃料電池ユニットは、ガスから取り出した水素を大気中の酸素と反応させて発電する、エネファームの核となるユニットです。さらに、発電の際に発生した熱でお湯を沸かし、貯湯タンクにためて利用できます。
エネファームは、エネルギーを効率よく利用して、発電と給湯を同時に実現する次世代給湯設備です。ただし、正式名称は「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」で、発電設備の位置付けとなっています。
エネファームのメリット
エネファーム最大のメリットは、停電時でも発電を継続できる点です。ガスと水道さえ機能していれば、電気に加えてお湯も作りだせます。また、断水時に発電を継続できる機種もあります。停電中にエネファームで利用できる電力は、機種により異なりますが、500W前後です。500Wの電力では、以下のような家電を使用できます。
・テレビ
・スマートフォン充電器
・扇風機
・LED電気スタンド
エネファームは停電中でも、最大で8日間発電を続けられますが、貯湯タンクが満杯になると発電が停止してしまいます。また、停電時に発電をおこなうためには「停電時発電継続機能付き」のエネファームを利用していることが必須条件です。さらに、停電が起こった際に稼働中でなければ発電できず、稼働していない場合は発電機など外部電力による再起動が必要です。停電時の使用に関しては細かい条件があるため、事前に確認しておきましょう。
【関連記事】エネファーム導入に必要な費用相場は? メリット・デメリットについてご紹介
条件によってはガス代が高くなる場合がある
エネファームはエネルギー効率のいい設備ですが、条件によっては省エネ効果が低くなる場合があります。エネファームの特性をしっかりと理解して、光熱費も含めて導入を検討しましょう。
エネファームで光熱費が高くなる2つのケースを紹介します。
貯水タンクが満杯だと発電できない
エネファームは発電と同時にお湯を沸かす仕組みであるため、貯湯タンク内にお湯が満杯の状態では発電できません。エネファームで発電していない間は通常の電気を使用するため、電気代がいつもよりかかることもあります。家族の人数が少なく、あまりお湯を使わない家庭の場合、貯湯タンクが満杯になりやすいため注意してください。お湯の使用量を試算してから、エネファーム導入を検討することが重要です。
貯湯タンクが満杯になった場合は、お湯を排出することで発電を継続できます。エネファームの機種によっては、自動的にお湯を排出できるものもあります。
ただし、発電を継続するためにお湯を無駄に排出すると、電気代は節約できても、水道代の上昇につながります。無理な発電の継続は、台風などの災害が予測される場合に限定するなど、全体のバランスを考えて利用しましょう。
冬場はガスの使用量が増える
ガスで給湯をおこなっている場合、エネファームを使用していなくても冬場のガス使用量は増加します。外気温の低くなる冬場は、お湯を沸かすために夏場と比べて多くのエネルギーが必要となるためです。エネファームも同様に、お湯を沸かすために多くの熱が必要となるうえ、貯湯タンクの保温にもエネルギーが消費されます。さらに、寒い時期はお風呂の足し湯などによってお湯の使用量も増えるため、貯湯タンクのお湯が常に不足している状態になりがちです。エネファームの稼働時間が長くなる分、ガス代が上昇します。
経済的メリットは大きくないエネファーム
停電時のバックアップ電源として心強く、環境にもやさしいエネファームですが、光熱費の節約といった経済的なメリットはあまり期待できません。エネファームを導入する際は、メリットとデメリットをしっかりと比較して検討することが大切です。
経済的負担を中心に、エネファームのデメリットを詳しく紹介します。
設置費用がかかるうえ寿命が長くない
エネファームを設置する際には、エネファームの本体購入費用と、設置するための工事費用が必要です。エネファームの本体価格の相場はおよそ100万〜200万円で、設置工事には30〜80万円ほどかかります。ただし、ほかの省エネ設備も含めた設置条件によっては、自治体などの補助金を利用できることもあります。またエネファームは、導入さえすれば永久に使用できるわけではありません。エネファームの発電は最長20年で停止します。しかも、保証期間を超える10年以降は、定期的なメンテナンス費用も必要となります。
エネファーム導入で節約できる光熱費を考慮しても、通常の給湯設備と比較してトータルの費用は高くなる場合がほとんどです。
売電によるメリットがほとんどない
エネファームで発電した電気を売却することによる、経済的メリットはほとんど見込めません。エネファームは基本的に必要な電力のみを発電する仕組みで、多くの余剰電力が発生しないためです。
また、ガス会社によっては売電そのものができません。買い取りサービスが提供されていても、利用できるエネファームの機種は限られていたり、太陽光パネルとの同時設置(ダブル発電)の場合のみなど、条件があります。
タンクを含めた機器の設置スペースが必要
エネファームの設置には発電設備だけではなく、貯湯タンクの設置スペースも必要です。また、エネファームの設置後は定期的なメンテナンスが欠かせません。機器のサイズ以上にメンテナンススペースの確保も必要です。エネファームの設置スペースの目安は、メンテナンススペースを含めて1390mm×800mm程度。[注1]一般的な給湯器と比べて広い空間が必要となります。導入する機種に必要なスペースを、事前に確認しておきましょう。また、設置後は簡単に移動できないため、設置場所についても十分に検討することが大切です。
最近では、コンパクト設計のものや、バルコニーに設置できるモデルも販売されています。設置スペースの判断がつかない場合は、専門店に相談しましょう。
[注1]https://home.osakagas.co.jp/search_buy/enefarm/about/installation.html
優待プランでガス代を節約しながらメリットを最大化する
エネファームの設置費用を加味すると、光熱費の節約メリットはあまり大きくありません。しかし、エネファームのメリットは、光熱費ではなく災害時の電力確保です。また、断水が発生しても、貯湯タンクにためたお湯を生活用水として利用できます。さらに、エネファーム用の優待プランを用意しているガス会社もあるため、光熱費がまったく節約できないわけではありません。ガス代を一定の金額に抑えながら、万が一の事態に備えられます。
エネファームの導入を検討する際は、経済的な側面だけではなく、生活スタイルや非常時のメリットも含めて、総合的に判断しましょう。
※「エネファーム」は、東京ガス株式会社、大阪ガス株式会社、ENEOS株式会社の登録商標です。