リビングの照明は、部屋の真ん中にあるシーリングライト一つだけ
「リビングの照明は、部屋の真ん中にあるシーリングライト一つだけ」。そんなお住まいも多いのではないでしょうか。しかし、食事や団らん、読書、映画鑑賞など、リビングでの過ごし方は多様です。実は、照明を一つから複数に変える「一室多灯(いっしつたとう)」という考え方を取り入れるだけで、暮らしはもっと豊かで快適になります。
この記事では、一室多灯の基本的な考え方から、具体的なテクニック、素敵な実例までを詳しくご紹介します。
 

なぜ「シーリングライト一つ」では物足りないのか?

リビングの照明といえば、天井の真ん中に設置されたシーリングライトを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、その「シーリングライト一つ」の照明環境に、どこか物足りなさを感じてはいないでしょうか。そう感じるのも、決して不思議なことではありません。現代のライフスタイルにおいて、リビングの役割は1つだけでなく、多様化しているからです。
 

リビングでの過ごし方は一つではない

リビングは、家族が集まって食事や会話を楽しむ場所です。
友人を招いてもてなしたり、一人で静かに読書や映画に没頭したり、
時には子どもが勉強したり、在宅ワークのスペースになったりすることもあるでしょう。
このように、リビングでの過ごし方は実に多岐にわたります。
それぞれのシーンに最適な光の環境は、当然ながら異なります。
活動に応じた、複数の照明を活用することで暮らしが快適になります。
【関連記事】リビング活用法~今だからこそ、さらに活用したいスペース|Libook|近鉄不動産株式会社
 

部屋が単調に見える「一室一灯」の限界

部屋全体を均一に、そして効率的に照らすことを目的とした「一室一灯」の考え方は、日本の住宅に広く普及してきました。
しかし、この方式では部屋に光のメリハリが生まれにくく、単調な印象を与えがちです。
せっかくこだわりの家具やインテリアを揃えても、立体感や奥行きが生まれず、その魅力が半減してしまうことも少なくありません。
おしゃれで心地よい空間を作るためには、光と影を効果的に操ることが重要なポイントになります。
 

暮らしを豊かにする「一室多灯」という考え方

暮らしを豊かにする「一室多灯」という考え方
そこで注目したいのが、一つの部屋に複数の照明を配置して光をデザインする「一室多灯(いっしつたとう)」という考え方です。
部屋全体を照らす灯りと、特定の場所を照らす灯りを組み合わせることで、空間の表情を豊かにし、暮らしの質を高めることができます。
 

「一室多灯」がもたらす3つのメリット

一室多灯には、暮らしを豊かにする多くのメリットが存在します。
第一に、空間にメリハリと奥行きが生まれる点です。
明るい場所を効果的に作り出すことで、部屋に立体感が生まれ、空間を広く感じさせる効果も期待できます。
第二に、シーンに合わせた最適な雰囲気作りが可能になる点です。
食事の時間はダイニングテーブルの上を明るく照らし、夜のリラックスタイムは間接照明の柔らかな光で満たすなど、光をシーンにより調整し、コントロールできます。
そして第三に、使い方によっては省エネにもつながる点です。。
常に部屋全体を明るくするのではなく、必要な場所だけを照らすことで、無駄な電力を抑えることができます。
 

知っておきたい「一室多灯」のデメリットと対策

多くの魅力がある一室多灯ですが、事前に知っておきたい注意点もあります。
複数の照明器具を揃えるため、シーリングライト一つに比べて初期費用がかかる場合やすべての照明を同時に点灯させると、かえって電気代が高くなる可能性も否定できません。
しかし、初期費用は必要になるものの、それは一過性のものです。また、消費電力の少ないLED照明を選ぶことで、ランニングコストである電気代は大幅に節約できます。
さらに、シーンに応じて必要な照明だけを点灯させる習慣をつけることで、無駄なく快適な空間を維持することが可能です。
 

基本は「主照明」と「補助照明」の組み合わせ

一室多灯の基本は、空間全体の明るさを確保する「主照明」と、特定の範囲を照らして光を補う「補助照明」の組み合わせで成り立っています。
主照明には、シーリングライトやダウンライトが使われることが一般的です。
一方で補助照明には、フロアスタンドやテーブルランプ、壁や天井を照らす間接照明など、非常に多くの種類があります。
これらの主照明と補助照明を、目的やデザインに合わせてバランス良く配置することが、理想の空間を実現するための第一歩となります。
 

【基礎知識】リビング照明選びで失敗しないための2つの単位

理想の照明計画を立てる上で、最低限知っておきたい専門用語が2つあります。
それは、光の「明るさ」を表す「ルーメン(lm)」と、「色合い」を表す「ケルビン(K)」です。
この2つの単位を理解するだけで、照明選びの失敗は格段に少なくなります。
 

部屋の明るさを決める「ルーメン(lm)」

ルーメン(lm)とは、照明器具が生み出す光の総量を指し、簡単に言えば「明るさの指標」です。
この数値が大きければ大きいほど、明るい照明器具ということになります。
リビングの主照明を選ぶ際は、部屋の広さに応じたルーメンの目安を知っておくことが非常に重要です。以下の表は、シーリングライトを設置する際のルーメンの目安です。

一室多灯の場合は、主照明をこの目安より少し暗めに設定し、補助照明で明るさを足していくと、より柔軟な光の調整が可能になります。
一方、主照明として複数のダウンライトを設置する場合は、シーリングライトとは少し考え方が異なります。ダウンライトは「部屋全体で必要な光の総量(総ルーメン)を、何個の照明で分けるか」という視点で計画します。
簡単な計算方法は以下の通りです。
  1. 部屋全体で必要な明るさを計算する
    まずは「1畳あたりに必要なルーメン(300~400lmが目安)」を使い、部屋全体の明るさを算出します。
    • 計算例(8畳リビング) 8畳 × 400lm = 3,200 lm
  2. 必要なダウンライトの個数を計算する
    次に、算出した部屋全体の明るさを、使いたいダウンライト1個のルーメンで割ります。
    • 計算例(1個700lmのダウンライトを使う場合) 3,200lm ÷ 700lm ≒ 4.65
この計算により、必要なダウンライトのおおよその数がわかります。ただし、これはあくまで目安であり、どこに配置するかによって空間の印象は大きく変わります。最終的な照明計画は、リフォーム会社や専門家と相談しながら進めるのがおすすめです。
 

空間の雰囲気を演出する光の色「ケルビン(K)」

ケルビン(K)は「色温度」と呼ばれる、光の色合いを示す単位です。
ケルビンの数値が低いほど暖色系のオレンジ色の光になり、数値が高くなるにつれて太陽光のような白い光、さらには青みがかった光へと変化します。
光の色は空間の雰囲気を大きく左右するため、目的に合わせて選ぶことが大切です。
例えば、リラックスしたい寝室には低いケルビンの「電球色」が、作業に集中したい書斎には高いケルビンの「昼光色」が適しています。
リビングでは、自然な色合いの「昼白色」を基本に、シーンに合わせて他の色温度の照明を取り入れるのがおすすめです。
 

シーン別! リビングがもっと快適になる照明テクニック

シーン別! リビングがもっと快適になる照明テクニック
照明の基礎知識を身につけたら、次はいよいよ実践です。
ここでは、具体的なリビングでの過ごし方に合わせて、照明を効果的に使い分けるテクニックをご紹介します。
ほんの少しの工夫で、リビングの快適性は劇的に向上します。
 

リラックスタイムを演出する間接照明

ソファで音楽を聴いたり、家族と談笑したりする夜のリラックスタイム。
こんな時は、天井の主照明を消して、間接照明のあかりだけで過ごしてみてはいかがでしょうか。
テレビの裏や観葉植物の後ろから壁を照らすことで、直接光が目に入らない、優しく落ち着いた空間を創り出せます。
光の色は、暖かみがありリラックス効果の高い電球色(2700K3000K程度)が最適です。
心と身体を落ち着かせ、一日の疲れを癒すのに役立ちます。
観葉植物について詳しくは以下の記事をご覧ください。
【関連記事】リビングに置きたいおすすめの観葉植物9選! 選ぶポイントや育て方を紹介|Libook|近鉄不動産株式会社
 

読書や勉強に集中するための手元のあかり

リビングのソファやダイニングテーブルで、読書や勉強をすることもあるでしょう。
部屋全体の照明だけでは、手元が影になってしまい、文字が見えにくいことがあります。
これは目の疲れや集中力の低下につながるため、手元を直接照らすあかりを追加することが重要です。
このような場合は、光の色が自然で文字が読みやすい昼白色(5000K前後)を目安に、必要な場所へしっかりと光を届けましょう。
 

映画鑑賞の没入感を高めるシアターライティング

自宅で映画鑑賞を楽しむなら、照明にもこだわって没入感を高めましょう。
部屋を真っ暗にすると、画面の光が眩しく感じて目が疲れる原因になります。
テレビ画面の背後をぼんやりと照らす間接照明を置くと、画面との明るさの差が緩和され、目への負担を軽減できます。
このとき、画面に光が映り込まないように照明の配置を工夫するのがポイントです。
光の色は、雰囲気を壊さない電球色(2700K前後)を選び、ごく低い明るさで壁や床を照らすと、まるで映画館のような空間を演出できます。
 

実例から学ぶ! 一室多灯で変わったリビング空間

ここでは、実際に一室多灯を取り入れて、より魅力的になったリビング空間の事例を見ていきましょう。
具体的な事例を見ることで、理想の空間をよりイメージしやすくなります。
 

【事例1】間接照明で光と広がりを演出したモダンリビング空間

間接照明で光と広がりを演出したモダンリビング空間
大阪市のI様邸では、「天井の高さを上げることは難しい構造」という制約の中で、間接照明を工夫することで光と広がりのあるリビング空間を実現しました。
リビング照明のポイント:
  • ●間接照明の工夫でリビング全体に光と広がりを演出
  • ●ラグジュアリーな照明デザイン
  • ●フローリングと照明の相乗効果で温かみを演出

この事例で特に注目すべきは、構造的な制約がある中、間接照明を戦略的に配置することで、リビング空間に奥行きと開放感を生み出している点です。アイランドキッチンを中心としたワンフロアのリビングダイニングキッチンに、ラグジュアリー感のある華やかな照明を組み合わせることで、まるでリゾートホテルのような上質なリビング空間が実現されています。
木の温かみを感じるフローリングと間接照明の柔らかな光が調和し、家族がリビングで過ごす時間を特別なものに変えています。天井を高くできない場合でも、照明計画次第でリビングをより広く、より魅力的に見せることができる好例です。
【関連記事】モダンでリゾート感のあるリビングダイニングキッチンへ(大阪府大阪市) リフォーム事例・写真集|奈良・大阪・京都・三重でリフォームするなら近鉄のリフォーム
 

【事例2】ダウンライトとスポット照明にこだわったシアターリビング

ダウンライトとスポット照明にこだわったシアターリビング
大和高田市のW様邸では、「音響とシアターで本格的に映画鑑賞などの趣味を楽しめる」リビングを目指し、特に照明計画にこだわったリフォームが実現されました。
リビング照明のポイント:
  • ●ダウンライトとスポット照明の組み合わせによる多彩な光の演出
  • ●映画鑑賞に最適化されたリビングの照明設計
  • ●ゆったりとした空間に合わせた照明の配置と明るさ調整

この事例では、リビングでの映画鑑賞という特定の用途に合わせて、ダウンライトとスポット照明を巧妙に組み合わせた照明計画が立てられています。映画を楽しむ際にはスクリーンに集中できるよう適度に照明を落とし、普段の生活では必要な明るさを確保する、シーンに応じた照明コントロールが可能になっています。
スポット照明により、リビング内の特定のエリアや装飾品を効果的にライトアップすることで、空間にメリハリと奥行き感を与えています。家族がリビングで過ごす様々なシーン—読書、団らん、映画鑑賞—それぞれに最適な光環境を提供できる、まさに「一室多灯」の理想的な活用例といえるでしょう。
【関連記事】細部にまでこだわった居心地の良い住まい-マンションのフルリフォーム-(奈良県大和高田市) リフォーム事例・写真集|奈良・大阪・京都・三重でリフォームするなら近鉄のリフォーム
 

【事例3】エコカラットと間接照明で実現したモダン空間

エコカラットと間接照明で実現したモダン空間
奈良県大和高田市のW様邸では、家族のライフスタイルに合わせてリフォーム。特にリビングボード周辺の照明計画が、空間の印象を大きく変えた印象的な事例です。
リビング照明のポイント:
  • ●リビングボード上部と足元の間接照明による立体的な光の演出
  • ●エコカラットとの組み合わせでリビングに生まれる美しい陰影効果
  • ●リビング空間全体の統一感を保つ照明計画

この事例では、リビングボード周りに上部と足元の両方から間接照明を当てることで、壁面に美しいグラデーションを作り出しています。調湿・消臭機能を持つエコカラットの質感が、間接照明によってより一層引き立てられ、リビングが昼間とは全く異なる洗練された表情を見せます。
特に注目すべきは、リビングの主要な視線が集まるテレビ周辺を照明の中心として設計している点です。家族が最も長時間過ごすリビングソファからの視点を意識して、テレビを見る際の目への負担を軽減しながらも、リビング全体に上質な雰囲気を演出する絶妙なバランスが実現されています。
また、隣接するキッチンエリアでは吊戸棚をなくしてダウンライトを採用することで、リビングとの一体感を保ちながら開放感を演出。料理をしながらリビングで過ごす家族の様子を自然に見守れる、機能的な照明計画も魅力の一つです。
【関連記事】同じ間取りのマンションをライフスタイルに合わせてリフォームしました<後編>
 

理想の照明を実現するための具体的なステップ

ここまでで、一室多灯の魅力は十分に伝わったことでしょう。
最後に、あなたのリビングで理想の照明を実現するための、具体的なステップをご紹介します。
できることから始めて、理想の空間づくりへ踏み出しましょう。

照明器具の設置と電気工事の基礎知識

照明器具を取り付けるには、自分で簡単にできるケースと、専門家による電気工事が必要なケースがあります。
天井に「引掛シーリング」という電源パーツがあれば、多くのシーリングライトやペンダントライトは自分で安全に取り付けが可能です。
しかし、ダウンライトを新設したり、壁にスイッチを増設したりするには、「電気工事士」の資格が必須となります。
無理なDIYはせず、必ず有資格者に依頼してください。
 

賃貸物件で照明を工夫する方法

「賃貸だから」と、照明のおしゃれを諦める必要は全くありません。
工事不要で一室多灯を楽しむ方法はたくさんあります。
床に置くだけのフロアスタンドや、サイドテーブルに置けるテーブルランプは、手軽に補助照明として活躍します。
また、コンセントから電源を取るLEDテープライトを使えば、簡単に間接照明を導入できます。
既存の照明に取り付けられる簡易ダクトレールも、スポットライトを追加したい場合に便利です。
 

プロに相談して理想の空間を実現する

「どのような照明器具を組み合わせれば良いか分からない」「電気工事も含めて、本格的に照明計画を見直したい」。
そんな時は、リフォーム会社やインテリアのプロに相談するのが最も確実な方法です。
あなたのライフスタイルや理想のイメージを伝えることで、専門的な知識に基づいた最適なプランを提案してくれます。
近鉄不動産では、照明計画を含む住まい全体のリフォーム・リノベーションについてのご相談を承っております。
豊富な実例を参考にしながら、専門家と一緒に理想の空間を追求してみてはいかがでしょうか。
【関連記事】近鉄不動産のリフォーム・リノベーション
 

まとめ

照明は、ただ部屋を明るくするための道具ではなく、
空間の雰囲気を演出し、日々の暮らしを豊かに彩る、インテリアの重要な要素です。
シーリングライト一つだけの「一室一灯」から、複数の灯りを組み合わせる「一室多灯」へ。
まずは手軽なスタンドライトを一つ、リビングに加えてみることから始めてみませんか。
きっと、今まで知らなかった我が家の新たな魅力に気づき、リビングで過ごす時間がもっと好きになるはずです。