近年、オール電化住宅が増えてきたこともあり、エコキュートに注目が集まっています。しかし、エコキュートについて「省エネで節電に役立つ」というなんとなくのイメージはあるものの、具体的な仕組みについて理解している人は多くないのではないでしょうか。
 
今回は、効率よくお湯を沸かせるエコキュートの仕組みや、メリットそしてデメリット、エコキュートの上手な選び方について紹介します。

エコキュートの仕組み

エコキュートの仕組み
エコキュートの正式名称は「自然冷媒ヒートポンプ給湯器」といいます。名前の通り、ヒートポンプ技術を利用してお湯を沸かす仕組みの給湯器です。
 
しかしこれだけ聞いても、すぐにイメージが湧かない方も多いでしょう。こちらではエコキュートでお湯を沸かす仕組みについて詳しく解説します。
 
エコキュートで沸かされるお湯は、お風呂場以外にもキッチンや洗面台などでも使用できます。お湯は毎日使うものなので、仕組みを理解し、効率よく節約につなげましょう。

空気の熱で効率よくお湯を沸かすエコキュート

エコキュートは大気中の熱を利用して効率よくお湯を沸かす仕組みが特徴です。お湯の沸き上げには電気も使用しますが、「ヒートポンプ技術」を採用することで、少ない電気でお湯を沸かすことが可能になりました。
 
環境省の調べによれば、給湯につかわれるエネルギー量は、家庭で消費されるエネルギー消費量全体の4分の1程度を占めるとされています。[注1]多くのエネルギーを消費する給湯部分をいかに効率化できるかが、省エネのカギになることがわかります。
[注1]https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/2017/result3/detail7/index.html

ヒートポンプの原理

エコキュートに使われるヒートポンプ技術は、大気中の熱をうまく活用することで、少ない電気で効率的にお湯を沸かします。では具体的に、ヒートポンプ技術ではどのような仕組みでお湯がつくられるのでしょうか。
 
エコキュートは主に「ヒートポンプユニット」と「貯湯タンク」の2つから構成されています。ヒートポンプユニットでは、まず大気中の熱を取り込みます。それをコンプレッサーで圧縮することで高温・高圧の空気をつくります。
 
高温になった冷媒(CO2)は、ヒートポンプ内の熱交換機によって水に伝わり、水をお湯に変えます。お湯は貯湯タンクに貯められ、設定温度になるように水と混ぜられたのちに、お風呂場やキッチン、洗面台などに運ばれるのです。
 
また貯めたお湯は断熱材を使用して保温します。したがって保温のために電気が使われることはないこともエコキュートのポイントです。
 
エコキュートでは電気も使用されますが、つくり出した熱と電気エネルギー量を比較すると、熱エネルギーは使用する電気エネルギーの3倍以上にもなるとされます。この結果から、エコキュートは効率性能の高い省エネ機器だといえるでしょう。

ガス給湯器とエコキュートの違い

エコキュート以外では、ガス給湯器によってお湯を沸かすのが一般的です。お湯を沸かす方法には次のような大きな違いがあります。
 
一般的なガス給湯器では、ガスを使って配管を熱し、そこへ水を通すことでお湯をつくります。エコキュートは貯湯タンクにお湯を貯めて使用しますが、ガス給湯器では、必要な際に必要な分のお湯をつくるのが特徴です。
 
また、ガス給湯器でお湯をつくる場合にはガス燃料に加えて、給湯器を稼働させるための電気も必要です。また、ガスを燃焼させてお湯をつくるガス給湯器に対して、エコキュートは火を使用しないため、火災のリスクがないのもポイントです。

環境にやさしい

エコキュートは、大気中の熱と少量の電気によってお湯を沸かすため、従来のガス給湯器に比べて大きく二酸化炭素の排出量を減らせます。
 
また、HEMS(Home Energy Management System)と呼ばれるエネルギー管理システムとも連携させられるのもポイントです。HEMSにより家庭で使われるエネルギーを見える化することで、エネルギーの節約につながります。
 
エネルギーの無駄を省くことは、地球温暖化対策へのアクションとして重要です。
 
【関連記事】エネルギー管理システムHEMSとは?基本的な情報とメリットやデメリットを徹底解説

エコキュートのメリット

エコキュートのメリット
では実際にエコキュートを導入すると暮らしにどのようなメリットがあるのでしょうか。
 
家庭で使うエネルギーを節約するためには、節約の仕組みや利点について知っておくことで、より効率よくエネルギーの消費ができるようになります。
 
設置してよかったと思えるように、エコキュート導入のメリットについてみておきましょう。

光熱費を抑えられる

エコキュートのメリットとして最初に挙げられるのが、光熱費が抑えられる点です。エコキュートは大気中の熱と少量の電気でお湯を沸かすため、導入後はガスを使いません。
 
また、エコキュートは設定により夜間などの電気代が安い時間帯にお湯がつくれるようになります。契約する電気料金プランによって、どの時間帯がお得なのかは異なるので、エコキュートを導入する際には電気料金プランも併せて確認しておくとよいでしょう。
 
以下に、給湯にかかる月々のランニングコストの例を紹介します。
 
【ガス給湯器の場合】
電気代:約11,500円
ガス代:約7,950円
光熱費の合計:約19,450円
※二人世帯を想定
 
【エコキュートの場合】
電気代:約13,600円
ガス代:0円
光熱費の合計:約13,600円
※二人世帯を想定
 
エコキュートはガスを使用せず、設定により電気代が安い時間帯にお湯を沸かします。上記の例を参考にすると、エコキュートの場合では月々の光熱費が約5,850円もお得になります。

停電時でもお湯が使える

エコキュートはつくったお湯を貯湯タンク内に貯めておき、必要に応じて使用します。そのため停電時でも、貯湯タンクにお湯が貯まっていれば、備え付けの非常用水栓からお湯を使うことが可能です。
 
また、タンクの容量によって使えるお湯の目安は異なります。370リットルのタンク容量の場合には、「浴槽へのお湯はりが1回(約180リットル)」と、「シャワーの使用が3回(1人あたり約20リットル)」に加えて「キッチン・洗面台の使用(約35リットル)」程度のお湯が使用できます。
※40℃のお湯を冬期に使用した場合
 
しかし、停電したタイミングで貯湯タンクに貯まっている湯量が少ないという可能性もあるでしょう。災害時にも安心して水が使えるように準備しておくには、容量の大きい貯湯タンクを購入しておくといいでしょう。

エコキュートのデメリット

エコキュートのデメリット
エコキュートには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
設置の際に「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、どのようなデメリットがあるのかを知っておくことが大切です。
 
メリットとデメリットの両方を比べて、自身のライススタイルに合っているのかを検討してみましょう。

導入費用が高い

エコキュートは、一般的なガス給湯器と比べて導入費用が高いといえます。貯湯タンクのサイズによって金額は異なりますが、エコキュートを導入する際にかかる費用は、総額で約40〜80万円程度が必要です。
 
ガス給湯器の導入は、約20〜40万円程度であるため、エコキュートの導入費用は高額だといえます。
 
しかし、お住まいの自治体によっては、エコキュートを導入する際に補助金制度が活用できる場合があります。費用が高額だと諦めてしまう前に、一度利用できる補助金制度があるかどうか確認してみましょう。

設置場所の確保が必要

エコキュートの導入には、ヒートポンプユニットと貯湯タンクの2つを屋外の平行な土地に設置する必要があります。そのため狭いスペースでも設置できるガス給湯器に比べると、より広い設置場所を確保しなければなりません。
 
しかし最近では、狭いスペースに対応した薄型のものも普及しています。今まで設置場所の問題でエコキュートを断念していた方でも導入できる可能性があるため、一度確認してみるとよいでしょう。

お湯切れの可能性がある

エコキュートのお湯は、貯湯タンクに貯められた後に各場所へ供給されます。そのため、いつもより多くのお湯を使った場合に、お湯切れを起こす可能性があるため注意しましょう。
 
そのため、エコキュートの貯湯タンク容量を検討する際には、次のことを考慮しておくと安心です。
 
・頻繁に来客がくる可能性があるか
・家族が帰省してくる頻度
・出産や同居などで家族構成が変わる可能性があるか
 
これらを踏まえて最適な量のタンクを準備しておけば、お湯が足りなくなる心配は大幅に減らせるでしょう。

エコキュートの選び方

エコキュートの選び方
エコキュートにはいくつかの製品ラインアップがあります。どのエコキュートを選べばよいか悩む場合には、自身の家族構成や設置場所の広さ、ライフスタイルなどを参考に選んでみましょう。
 
こちらでは、エコキュートの選び方を3つ紹介します。

設置場所に合わせて選ぶ

エコキュートは、設置場所や広さに合わせて、いくつかのタイプがあります。敷地のサイズや、土地の形を考慮しながら最適なものを選びましょう。
 
エコキュートの種類には、次の3つのものがあります。
 
【標準型】
貯湯タンクがスクエアのタイプ。標準モデルで、充実したラインアップが特徴です。
 
【薄型】
貯湯タンクが薄く、横広な形が特徴。奥行きがないような場所にも設置しやすいタイプです。
 
【省スペース型】
貯湯タンクがスリムなタイプ。狭いスペースにも設置できるのが特徴です。また加熱能力が高い点は注目ポイントです。

家族構成によってタンク容量は変わる

お湯切れを防ぐためにも、エコキュートを選ぶ際には家族構成をしっかりと考慮することが重要です。以下は、家族人数別に適したタンク容量と、参考金額です。
 
家族人数 貯湯タンク容量 参考金額
3〜4人家族 370リットルクラス 772,000円
4〜5人家族 460リットルクラス 861,000円
5〜8人 550リットルクラス 961,000円
※三菱Aシリーズ同スペックの税別価格
 
エコキュートは貯湯タンク内のお湯に水道水を混ぜ、温度調節をしてから供給するため、実際に使える湯量はタンク容量よりも多くなります。しかし寒い時期には、他の時期よりもたくさんのお湯が使われるため、使える湯量が少なくなることを覚えておきましょう。

お風呂機能をライフスタイルに合わせて選ぶ

エコキュートには、主に4つの給湯タイプがあります。それぞれのタイプによって使える機能が異なるため、ライフスタイルに合わせた製品を選ぶようにしましょう。
タイプ①:フルオートタイプ
フルオートタイプはスイッチを押すだけで「お湯はり」「保温」「足し湯」を全自動で行えます。「追いだき」機能もついているため、家族構成が多い家庭でも、いつでもみんなが温かいお風呂につかれるのが魅力です。
タイプ②:オートタイプ
オートタイプでは「お湯はり」が自動ででき、「足し湯」は手動で操作します。「保温」「追いだき」機能はついていませんが、その分本体価格が低く抑えられます。
タイプ③:給湯専用タイプ
給湯専用タイプは手動で「お湯はり」をおこないます。お湯が設定量に達したらアラームが鳴るので、手動でお湯を止めるシンプルなタイプです。
タイプ④:多機能タイプ
多機能タイプは、フルオートタイプの機能に加えて「床暖房」や「浴室換気・暖房・乾燥」機能などがついた万能タイプです。
 

給湯効率の高いエコキュート

エコキュートは、少量の電気と大気中の熱を利用してお湯を沸かすため、ガス給湯器に比べてエコで省エネです。また、夜間などの電気料金が安い時間帯にお湯をつくるように設定できるため、効率的に節約できる仕組みが特徴です。
 
さらに、エコキュートは停電時などでも備え付けの非常用水栓からお湯が取り出せるため、災害時などでも水の確保に役立ちます。
 
しかし、エコキュートには、お湯切れ予防などいくつか注意すべき点もあります。安心してお湯を使うためにも、家族構成やライフスタイルなどに合わせて、余裕をもった湯量が蓄えられる製品選びをしましょう。
 
エコキュートには設置場所に合わせて選べるサイズ展開や、異なったお風呂機能が備わっています。どのような場所に設置して、どのような機能がほしいかによって適切な製品を選ぶことで、暮らしを豊かに整えましょう。
 
※エコキュートは関西電力株式会社の登録商標です。

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