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2050年までの脱炭素社会実現を目標に、2015年から急速に普及してきた「ZEH(ゼッチ)住宅」。その後を追うように開発が拡大している「ZEHマンション」にも、今注目が集まっています。
暮らしの快適さを保ちながら、環境負担の削減も実現する「ZEHマンション」とは、どのような住宅なのでしょうか。購入を検討する際に知っておきたいZEHマンションの仕組みやメリットを見ていきましょう。
記事の最後に住宅ローン控除についての情報もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
ZEHとは?
ZEH(ゼッチ)とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の頭文字を取った略称です。
住宅の断熱性や省エネ効果を高め、太陽光発電などの自然エネルギー(一次エネルギー)を創りだすことで、家庭で使う年間の消費エネルギー収支を概ねゼロにする住宅を指します。
ただし、ZEH住宅におけるエネルギー消費の対象は一次エネルギー消費量の対象となる「冷暖房」「給湯」「換気」「照明」の4つのみです。テレビや冷蔵庫などの家電は対象外のため、光熱費がゼロになるわけではありません。
「省エネ」×「創エネ」
ZEHを知るうえで「省エネ」と「創エネ」は重要なキーワードです。省エネと創エネは、住む人にとって快適で、かつ地球環境に負担がかからない住宅であるための、基本的な要素といえるでしょう。「省エネ」とは、断熱性を向上させエネルギー効率の高い設備を導入して、快適な暮らしを維持しながら光熱費も抑え、限られたエネルギー資源を有効に使うことです。
「創エネ」とは太陽光発電のような、自然のエネルギー(一次エネルギー)を創出する設備を利用して、生活に必要なエネルギーを自分たちでまかなうことです。
これまでは新築戸建住宅が対象の「ZEH住宅」が主流でしたが、2018年以降は集合住宅向けの「ZEHマンション」の普及も進んでいます。
ZEHの普及に向けた目標値
2015年以降供給実績を伸ばし続けている「ZEH住宅」は、2020年に年間約6.6万戸、累計約27万戸に達しました。政府は今後の目標として「2030年以降に新築される住宅にはZEH住宅が標準となる」「新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を導入する」ことを掲げています。[注1]
一方「ZEHマンション」に関しては、2018年に補助金制度の支援対象となった影響で、総延床面積が約5万㎡から2020年には約26万㎡にまで増加しました。
しかし、着工面積全体のわずか1.2%にとどまっているため、ZEHマンションの更なる拡大に向けて、取り組みを進めていく必要があります。
[注1]2020年度のZEHの普及状況
更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について」より
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/220330-1.pdf
ZEHマンションの特徴
戸建住宅とは違い住戸数の多いマンションでは、自家発電設備を設置する屋上のスペースに限界があります。
そのためマンションの階数が多くなるほど、自分たちで消費電力をまかないきれなくなることが課題です。
そこでZEHマンションの場合は、階層が上がるに応じて「再生エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減基準」を緩く設定しています。
またZEHマンションの基準は、共用部と専有部を考慮した「住棟単位」と、専有部のみを考慮した「住戸単位」に分けて評価されるのも特徴です。
ZEHマンションの定義
ZEHマンションの定義は、階層別で4つに分かれています。1〜3階建が「ZEH-M」と「Nearly ZEH-M」、4〜5階建が「ZEH-M Ready」、6階建て以上が「ZEH-M Oriented」です。評価基準が全てに共通している項目と、階層によって基準が緩くなっている項目があります。以下は、ZEHマンションの評価基準を表に示したものです。
出典:ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案(経済産業省・環境省)
外壁や窓、屋根などの外皮に求められる断熱性能については、ZEH-MからZEH-M Orientedまで、住棟・住戸において強化外皮基準を満たした性能が必要になります。
また、太陽光発電などの再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量が、共用部を含む住棟全体と当該住戸において、削減率=省エネ率20%以下達成が必要なことも、全てに共通の評価基準です。
階層ごとに基準が異なるのは「太陽光発電などの再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量」の省エネ率です。
年間の一次エネルギー消費収支がゼロになるのは「ZEH-M」の建物のみで「ZEH-M Oriented」に関しては、太陽光発電の設置義務がなく、省エネ率を20%削減するのみでクリアできます。
ZEHマンションを後押しする補助金
政府はZEHマンションの自立普及支援として、建築費に対する補助金制度を設けています。補助金額は1〜3階建の低層階には一戸あたり40万円×住棟に含まれる戸数かつ1物件の上限6億円(3億円/年)、中層階と高層階(4~20階)には補助対象経費の1/3以内かつ1物件の上限8億円(3億円/年)です。
また、2030年までの中長期的なZEH-Mの普及対策のひとつとして「ZEHデベロッパーの登録制度」も創設しました。「2020年までに自社提供の住宅をZEH住宅とする」と宣言・公表した事業者に対し登録と実績の評価をしています。[注1]
ZEHマンションの補助金手続きを行うのは、不動産会社です。ZEHマンションの建築と補助金の利用を検討する際は、不動産会社に相談して住宅プランを立てましょう。
[注1]2020年度のZEHの普及状況
更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について」より
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/220330-1.pdf
ZEHマンションの魅力
ZEHマンションにはどのような設備が導入され、私たちにどのようなメリットがあるのでしょうか。
従来のマンションよりも地球環境に配慮した、ZEHマンションの設備について紹介します。
快適に過ごせるZEHマンションの設備
ZEHマンションには、室内の温度を守る高性能断熱材と、外気から守る高性能サッシが導入されているものもあります。
窓にはLOW-E複層ガラスを採用することで、寒い季節でも快適に過ごせます。
省エネ設備に欠かせない高効率エアコンやLED照明、節湯式水栓などは、従来の設備機器と比べて光熱費のランニングコストを抑えられるのが特徴です。
全住戸にエネファーム(家庭用燃料電池)が備えられたマンションもあります。エネファームはガスで発電し、発電時に発生した熱でお湯を沸かすことができる創エネ設備です。
高断熱外皮と省エネ設備、創エネ設備が一体となり、家族にとって快適で地球にもやさしい次世代型の住宅が実現するのです。
ZEHマンションのメリット
ZEHマンションに住むことで、健康的な生活が送れるだけではなく、経済的にもさまざまな恩恵が受けられます。
①快適に暮らせる
高断熱・高気密住宅のため、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。部屋間の温度差が小さくなるため、ヒートショック(※温度差により血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こること)のリスク軽減にもつながり安全です。②光熱費を削減できる
高断熱住宅に加えて、高効率エアコンや高断熱浴槽、ガス、水道に見合った設備にすることで、電気、ガス、水道の使用量を抑えられます。エネルギー消費の節約になり、月々の光熱費を削減できるでしょう。③非常電力を蓄えられる
太陽光発電と蓄電池を備えたマンションでは、非常時にも電力の供給ができます。蓄えた電気を共用部の照明や給水ポンプなどに活用し、マンションでの生活を継続できるので安心です。家庭用燃料電池のある住戸でも、発電時に限り非常用のコンセントを使って電気が使えます。冷蔵庫や照明など必要最低限のものには使えるので、災害時のストレスが軽減できる便利な設備といえるでしょう。
2022年以降の住宅ローンの控除について
出典:令和4年度住宅税制改正概要
ZEHマンションを検討・購入する際、住宅ローン控除と金利については必ず確認しておきたいポイントです。
住宅ローン控除の対象となる入居期限が2022年から4年間延長され、引き続き住宅ローンの控除を受けられるようになりました。
入居年が2022年と2023年の場合、借入限度額が4,500万円で控除率は0.7%、控除期間は13年です。2024年と2025年入居の場合は、借入限度額が3,500万円で控除率は同じく0.7%、控除期間が10年になります。
その他の一般的な新築住宅(省エネ基準を満たさない住宅)は、2022年と2023年に入居した場合の借入限度額が3000万円で、ZEH住宅よりも1,500万円少なくなっています。期間合計の最大控除額については、ZEH住宅の409.5万円に対して、一般的な新築住宅は273万円となっており、省エネ性能が高い住宅を購入するほど多くの控除が受けられるようになっています。
住宅ローン控除を利用するためには、確定申告と年末調整が必要です。また、住宅ローン金利を引き下げている金融機関のリサーチを行うこともおすすめします。
まとめ
ZEHとは、省エネ構造・設備が備わっており、家庭で使うエネルギーを自家発電でまかなうことで、エネルギー消費の収支をゼロ以下にする住宅のことです。しかし、住戸数が多いマンションに関しては、自家発電設備の設置に制限があるため、建物の階層によって4つの定義を設け、基準を変えています。
ZEHマンションにはそこに住む家族の健康だけではなく、ランニングコスト削減や税制面での優遇を受けられるなどの経済的なメリットがあります。
今後ますますの開発が期待されるZEHマンション。マンションの購入を検討する際には、ZEHマンションを選択肢に入れるのはいかがでしょうか?
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[注1]2020年度のZEHの普及状況
更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について」より
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/220330-1.pdf
出典:国土交通省HPより
令和4年度住宅税制改正概要
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001447132.pdf