ZEH(ゼッチ)住宅とは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略語です。
「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つの効果を取り入れることによって、家庭で使用する年間の「消費エネルギー」量を
0(ゼロ)以下にする住宅です。
 
2020年にはハウスメーカーによる新築戸建て住宅の56%が、ZEH住宅として建てられました。脱炭素社会の実現に向けて、ZEH住宅の重要性はますます高まっています。
 
ZEH住宅は、従来の家と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。気になる補助金制度についても紹介しますので、住宅の購入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
 

ZEHは環境にやさしい次世代の住宅

ZEH住宅 省エネ 環境
家庭で使用するエネルギー量を、その住宅で創出できるZEH住宅には、3つの特徴があります。
 
地球環境にやさしく人間にとっても快適な暮らしを実現する、ZEH住宅の特徴を見ていきましょう。

ZEH住宅の3つの特徴

ZEH 断熱 省エネ 創エネ
ZEH住宅には「断熱」「省エネ」「創エネ」の、3つの特徴があります。どれもZEH住宅として認定を受け、補助金制度を利用するための基準があります。
 
まずはそれぞれの特徴について説明します。
①断熱
ZEH住宅は、断熱性、気密性の高い外皮素材を使って建てられるのが特徴です。外皮とは、屋根や壁、窓や床などを指します。
 
高断熱・高気密の外皮が魔法瓶のように家をすっぽりと包むため、室内の温度が一定となり、外気温の影響を受けにくい住宅になるのです。
②省エネ
ZEH住宅では、家庭内の消費電力量や自家発電の稼働状況などを可視化した「HEMS(Home Energy Management System)」を使って電気を管理します。
 
消費者自らが電力量を把握できるため、効率的なエネルギー消費を目指せます。
 
また省エネ性能の高い住設機器や換気システム、LED照明などを導入しているため、従来の生活と比べて消費エネルギーを減らせることも特徴のひとつです。
③創エネ
「創エネ」とは、自然の力を使ってエネルギーを創り出すことです。代表的な創エネとして、住宅の屋根に設置する太陽光発電が挙げられます。
 
太陽光発電で得た電力を家庭で使用し、余った電気は電力会社へ売ったり、蓄電して停電時に備えたりすることも可能です。

ZEHの普及状況

脱炭素社会に向けた次世代の家として注目されているZEH住宅ですが、実際はどの程度普及しているのでしょうか。下記の表は、ZEH支援発足から現在までの普及状況を示しています。
ZEH 普及状況 
出典:更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について (ZEHロードマップフォローアップ委員会)

2012年のZEH支援事業開始当時は、年間400件程度の供給実績でしたが、2015年にZEHロードマップ検討委員会を設置し、積極的な取り組みを行った結果、2020年には年間約6.6万戸まで増加しました。
ZEH 政策動向 関連予算案
出典:ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案(経済産業省・環境省)

さらに2020年までの政府目標である「ハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上でZEHとなることを目指す」ことについて、ハウスメーカーでは56.3%を達成しました。しかし、全体では24%に留まっており、更なるZEHの普及が求められています。[注1]  
今後の目標としては「2030年以降に新築される住宅には、ZEH住宅が標準となる」及び「新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を導入する」ことを掲げています。[注2]
 
また新築戸建住宅だけではなく、建売住宅や賃貸物件、マンションなども併せて普及が求められています。
 
[注1]ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案(経済産業省・環境省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001474255.pdf
 
[注2]更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について(ZEHロードマップフォローアップ委員会)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/220330-1.pdf
 
【関連記事】ZEH(ゼッチ)マンションで光熱費ゼロって本当? 話題のZEHマンションの仕組みやメリットとは  
 

ZEH住宅のメリット

ZEH住宅 家族 マイホーム 環境
「断熱」「省エネ」「創エネ」を備えたZEH住宅は、地球環境の保全に貢献しながら、
そこに住む家族にもさまざまなメリットをもたらします。

 
ZEH住宅で暮らす4つのメリットについて解説します。

①快適に過ごせる

一般的な住宅では、冬場に「リビングや浴室は温かいのに、廊下や脱衣所は寒い」といった状況が生まれます。しかし、ZEH住宅の断熱効果により部屋ごとの温度差がなくなることで、家中で年中快適に過ごせます。
 
また、室内の温度差が小さくなることで、冬に起こりやすいヒートショック(※温度差により血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こること)のリスクを抑えられます。ZEH住宅の高い断熱効果は、健康面でのメリットも期待できるでしょう。

②光熱費を削減できる

断熱性能の高さや省エネ効果の高い住設機器を導入することで、従来に比べて光熱費を抑えられます。
 
さらに太陽光発電で得た電力を住宅で使用するため、総合的なランニングコストの削減を図れます。
 
太陽光パネルでの発電量によっては消費電力を上回り、エネルギー収支がプラスに変わる場合もあります。余った電力は、蓄電池に蓄えたり、電力会社に売電したりできます。

③非常電力を蓄えられる

太陽光パネルで発電した電気を家庭で使用し、余った電力は蓄電することができます。
 
災害が多い日本では、いつ停電が起こってもおかしくはありません。日頃当たり前に使っている電気が突然止まってしまうと、生活に大きな影響を及ぼします。
 
蓄電設備のあるZEH住宅であれば、災害時に停電しても備蓄しておいた電気を使って生活が続けられるため、災害からの回復が早くなるメリットがあります。

④補助金でお得に建てられる

環境省・国土交通省・経済産業省の3省が連携して支援事業を推進しているため、補助金を利用してお得にZEH住宅を建てられます。
 
ZEH住宅を建てるには、従来の家よりも設備投資が必要です。予算面での心配があり二の足を踏んでいた方も、ZEH住宅を手に入れられるかもしれません。
 
ただし補助金を受け取るには、さまざまな要件を満たし、公募期間や完了期間のスケジュールに合致する必要があります。補助金についての詳細は後述いたします。

ZEH住宅のデメリット

ZEH 太陽光発電 断熱性 エネルギー

エネルギー効率の高いZEH住宅を建てるには、太陽光発電設備や断熱性の高い外皮素材を導入しなければならず、一般住宅と比べて建築コストが高くなりがちです。  
また、太陽光パネルを設置すると屋根のデザインが損なわれるため、建物の外観を気にする方にとってはデメリットとなるかもしれません。
 
太陽光パネルで発電される電力量は、天候によって大きく左右されます。雨や曇りの日が続く場合や、居住地域によっては平均的な日照時間が短い所もあるでしょう。
 
状況によっては消費したエネルギーを十分まかなえるだけの電力をつくりだせない場合もあるため、設置前には十分な検討が必要です。
 
[注3]国土交通省「なるほど 快適・安心な住まい 省エネ住宅」P18
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/naruhodosyouenejuutaku.pdf
  
【関連記事】ZEHで後悔しないために! 建てる前に知っておきたい注意点を紹介

ZEHの補助金制度について

ZEH ZEH+ 次世代ZEH+ LCCM住宅
戸建て住宅の2022年時点のZEH支援制度には「ZEH(ゼッチ)」「ZEH+(ゼッチプラス)」「次世代ZEH+」「LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅」の、4つの区分があります。
 
ZEH支援制度の区分ごとに、外皮性能や導入する設備が決められています。補助金額は要件によって変わりますが、2022年度は一戸あたり55万〜140万円です。(※地域により強化基準が異なります。)
 
マンションやアパートなどの集合住宅に関しては「ZEH-M」というマンション向けの目標値があり、登録を受けた「ZEHデベロッパー」が建築主または建築を請け負うことが基本要件となっています。
 
※補助金制度は2022年8月時点の情報です(2023年に内容変更予定)

ZEHの補助金をもらうための注意点

ZEH住宅の補助金は、申請者全員が必ずもらえるわけではありません。また補助金の金額は毎年変わるため、常に各省庁が発信している最新の情報をチェックする必要があります。
 
ZEH住宅には「ZEHビルダー」と呼ばれる、ZEH住宅を建てるための申請と登録をしたハウスメーカーや工務店が対応します。補助金を利用したい方は、ZEHビルダーと一緒に申請スケジュールや必要書類などを確認しながらすすめていきましょう。

まとめ

ZEH ZEH住宅 環境にやさしい
「断熱」「省エネ」「創エネ」を兼ね備えたZEH住宅は、家庭で「使うエネルギー」と「創るエネルギー」収支を0以下にすることを目指す、地球環境にやさしい住宅です。
 
ZEH住宅に住む家族にとっては、光熱費を抑えられるほか、高い断熱効果により季節を問わず快適に過ごせるメリットがありますが、設備導入のための初期費用が高くなってしまうデメリットもあります。
 
補助金制度を上手に利用しながらZEH住宅を建てられるよう、ZEHビルダーと話し合いながらすすめましょう。
 
「自分たちで使うエネルギーは自分たちでまかなえる」そんな住宅が当たり前になる日も、そう遠くはないかもしれません。

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[注1]ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和4年度の関連予算案(経済産業省・環境省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001474255.pdf
 
[注2]更なるZEHの普及促進に向けたZEH委員会の今後について(ZEHロードマップフォローアップ委員会)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/220330-1.pdf
 
[注3]国土交通省「なるほど 快適・安心な住まい 省エネ住宅」P18
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/naruhodosyouenejuutaku.pdf