ラーメン構造とは、構造の種類のひとつで、垂直方向の「柱」と、水平方向で柱をつなぐ「梁」によって建物全体を支える構造のことです。ラーメン構造には、窓や扉を自由な位置に設けられる、大きな空間を実現できるといったメリットがあります。一方で、部材のサイズが大きくなりやすい、室内に凹凸(おうとつ)ができやすいというデメリットもあります。

ラーメン構造は、一般的なマンションやオフィスビルなどで頻繁に採用される構造のひとつです。
他の構造と比較すると、自由なデザインを実現しやすいのですが、さまざまなデメリットもあるため注意しなければなりません。
 
この記事では、ラーメン構造の特徴や建物に採用するときの注意点、他の構造との違いや耐震性などを詳しく説明していきます。

ラーメン構造とは柱と梁で建物全体を支える構造

ラーメン構造 柱 梁
ラーメン構造とは、構造の種類のひとつで、柱と梁で建物全体を支える構造のことです。
 
ラーメン(Rahmen)という言葉はもともとドイツ語で、「枠」や「額縁」という意味があります。柱と梁で四角形の「枠」を構成することから、ラーメン構造という名前が付けられているのです。
 
ここでは、ラーメン構造の特徴について3つのポイントで説明します。

1. ラーメン構造では柱と梁を溶接などで剛接合する

ラーメン構造の大きな特徴は、柱と梁が変形しないよう、溶接などで一体化させて剛接合することです。
柱と梁の接合部分がしっかりと完全に固定されているため、水平方向に力がかけられても変形しにくくなっています。
 
地震により横揺れが発生したときは、柱と梁が一体化することで建物全体で地震力に耐えようとします。

2. 他の構造よりもデザインの自由度が高い

デザインの自由度が高いことも、ラーメン構造の特徴のひとつです。
ラーメン構造においては、基本的に柱と梁だけで建物全体を支えています。
 
柱と梁で構成された「枠」の中には補強材を配置する必要がないため、窓や扉の位置を自由に決めたり、広い空間を確保したりすることが可能です。
 
設計の自由度が高いため、マンションやオフィスビルで採用されます。
 
ラーメン構造の採用によって、大きな窓のある明るいリビング・ダイニングを設計したり、大きな執務室や会議室のあるオフィスビルをつくったりすることが可能です。

3. 構造設計や施工が簡単

ラーメン構造は、柱と梁で建物を支えるというシンプルな形式であるため、構造設計は比較的簡単といえるでしょう。
もちろん、部材の寸法や地震力への対応などを考えなければならないため、専門知識は必要です。
また、構造部材の施工、加工が難しくないため、工事はスムーズに進みます。施工の複雑さによって販売価格が高くなったり、建物の完成が遅れたりする心配もありません。

ラーメン構造と他の構造との違い

ラーメン構造 ブレース構造 ツーバイフォー
ラーメン構造以外にも、斜め材を用いるブレース構造や、6枚の面で構成する壁式構造があります。
 
ここでは、ラーメン構造と、ブレース構造や壁式構造との違いについて紹介していきます。
 

ブレース構造では斜め材を用いる

ブレースは建物を補強する部材のひとつで、柱と梁で構成された四角形の対角線上に、斜めに設置します。
ブレースを設けることで建物は水平方向からの力に強くなり、地震や暴風などによる変形や倒壊を防ぎます。
 
ブレースがある程度の水平力を受け流してくれるため、ラーメン構造と比較すると、柱や梁の寸法を小さくすることも可能です。
 
ただし、ブレースは対角線上に設けるのが基本であるため、扉や大きな窓、大空間をつくりたいと思っても、ブレースが邪魔になり、窓や扉の位置やサイズに制約がある場合もあるでしょう。

壁式構造は耐力壁で建物を支える

ツーバイフォー 耐力壁
壁式構造(ツーバイフォー)は「耐力壁」といわれる、高強度の鉄筋コンクリートの壁で建物を支える構造です。
 
壁式構造は柱や梁ではなく、壁という「面」で建物を支えるため、耐震性に優れます。
また、高い防音・防熱の効果が見込める点もメリットです。
 
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ただし、壁式構造は後にリノベーションを行う際、変えられる箇所が限られるため、注意しなければなりません。
壁式構造では、壁自体が建物の強度を保つ重要な役割を果たします。
したがって、壁の撤去をともなう間取りの変更や、窓や扉の数・大きさの変更は難しいでしょう。

ラーメン構造を採用するときの2つの注意点

ラーメン構造 梁
ラーメン構造には多くのメリットがありますが、採用するときの注意点もあります。
柱や梁などのサイズが大きくなる、構造部材のコストが高くなる、といった点にはとくに注意しましょう。
 
ここではそれぞれの注意点について詳しく説明しますので、参考にしてください。

1. 柱や梁などのサイズが大きくなりがち

柱や梁といった部材のサイズが大きくなることは、ラーメン構造の住居を購入するときの注意点のひとつです。
ラーメン構造を用いる場合、ブレース構造のように斜め材などを使わないため、柱と梁だけですべての荷重に耐えなければなりません。
 
少ない部材で荷重に耐えるためには、それぞれの部材を大きくする必要があります。
その結果、太い柱や梁を用いることになり、室内に凹凸(おうとつ)ができてしまいます。
 
家具を配置しにくくなる場合もあるため、ラーメン構造の住居を購入するときは、しっかりと確認するようにしましょう。
凹凸(おうとつ)の多い部屋を購入する場合は、高さや幅などを測ってから家具を購入することが大切です。
 

2. 構造部材のコストが高くなりがち

ラーメン構造を用いるときは、建設コストが高くなりやすいことにも注意しなければなりません。
前述のとおり、ブレース構造と比較して、ラーメン構造で用いる柱や梁のサイズは大きくなりがちなため、その分、材料費も高くなってしまいます。
 
大きい部材を用いると建物全体が重くなるため、土地の地盤改良や大規模な基礎工事が必要になるケースもあり、さらにコストが高くなる可能性もあります。

ラーメン構造の耐震性について

ラーメン構造 構造
建物の耐震性は、構造だけで決まるわけではありません。
部材の寸法や建物全体の形状、地盤の状況など、さまざまな要素が耐震性に影響します。
 
つまり、ラーメン構造だから、ブレース構造だからと単純に言い切ることはできないということです。
 
構造計算を行うときは、このようなラーメン構造の特性を把握したうえで柱や梁のサイズを検討するため、地震に耐えられる建物を構築するように設計しています。
 
実際、ラーメン構造は最も一般的な構造形式であり、多くのマンションやオフィスビルなどにも採用されています。
どの構造を選ぶべきかは、建物の用途や規模、土地の状況や予算などによっても異なるため、専門家と相談したうえで最適なものを選ぶようにしましょう。
 
 

ラーメン構造のメリット・デメリットをしっかり理解したうえで採用しよう。

今回は、ラーメン構造の特徴やメリット・デメリット、他の構造との違いなどについて説明しました。
 
ラーメン構造には、デザインの自由度が高く、窓や扉の位置を自由に決められる、広い空間を確保できるといったメリットがあります。
一方で、柱や梁などのサイズを大きくする必要があったり、構造部材のコストが高くなりやすかったりするデメリットも存在しています。
 
ただ、どの構造形式であっても、メリットとデメリットがあります。
必ずメリットだけでなく、デメリットもよく理解して、検討しましょう。
 
また、どの構造形式を選ぶべきかは、建物の用途や規模や、予算などによっても異なるため、単純には決められません。
 
マンションや一戸建てを購入したり設計したりするときは、専門家と相談したうえで最適な構造を選ぶことが大切です。