サンマルク [PATISSERIE a terre]
サンマルク [PATISSERIE a terre]
今回ご紹介するのは、大阪府池田市にある「PATISSERIE a terre(パティスリー ア テール)」の「サンマルク」です。これは、バニラとチョコレートのクリームを重ねたフランスの古典菓子のひとつ。8割以上をクリームが占めるお菓子でありながら、口溶けのいいクリームとほろ苦いキャラメリゼのおかげで、甘さの残らない後味のいいお菓子に仕上がっています。ショーケースにはこのほかに、さっぱりとした味わいのバタークリームを使ったフランボワジエや、甘いメレンゲとほろ苦いキャラメルクリームの組み合わせが絶妙なムラングシャンティーといった伝統的なお菓子が多く並びます。その理由をオーナーシェフの新井和碩(かずひろ)さんは「流行のお菓子と違って古典菓子は、食べ続けても飽きることはありません。そこに魅力を感じました」と話します。一方で、素材からインスピレーションを得て、オリジナルを手がけることも。最近は美味しい紅茶との出逢いから、アールグレイが香るキャラメルとプラリネなどを組み合わせた「プレジール」が誕生。この新しいお菓子は、クラシックな顔ぶれの中で鮮烈な個性を放っています。
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サンマルク450円(税別)
<PHOTO>サンマルク450円(税別)
<PHOTO>(左上から時計回り)ムラングシャンティー380円、プレジール450円、フランボワジエ450円(すべて税別)
シンプルな生菓子からショコラまで
生菓子は、ミルフィユやババなど、素材も見た目もシンプルなフランスの古典菓子が中心。秋冬は、バタークリームを使ったものや、タルトタタンやモンブランなど旬の食材を使ったお菓子も多く登場します。加えて、さまざまな種類のショコラも。「チョコレートは、産地や品種、加工する人によって味が変わる奥深い素材。やればやるほど迷走しますが、それがおもしろいんです(笑)。楽しみながら作っています」と新井さん。1粒180円~とリーズナブルなのも魅力です。
「私福の時間とは?」
パティシエがプライベートで至福の時を感じるスイーツをリレー方式で毎月ご紹介。今回のサンマルクを推薦いただいた垣本シェフのボンボンショコラはvol.06で掲載しています。
「古典菓子はシンプルなお菓子。だからこそ、素材と製法にこだわれば、より美味しく仕上がる」と話す新井さん。旬の果実を吟味して使用するのはもちろん、バターは乳味の異なる4種類の発酵バターを、小麦粉はさまざまな食感・風味のものを5種類も使い、工夫を凝らしてお菓子を作り上げています。中でも新井さんの技術力が光るのが、バタークリームです。バタークリームといえば重いイメージがありますが、バターにピューレやメレンゲなどの水気のある素材を分離直前まで加え、軽くホイップすることで、しっかりした口当たりと口の中ですっと溶ける軽さを両立できるのだそう。定番なのに一味違うア テールのお菓子は、新井さんの言葉を借りれば「どこにでもあるけど、どこにもないお菓子」。このお店を訪れれば、長く付き合えるお菓子と出会えそうです。
SHOP DATAPATISSERIE a terre
住宅街に佇むスタイリッシュなパティスリー。ブティックのような店内には、生菓子を中心に、カラフルなパートドフリュイやマカロンなども並びます。「フランスでは、ケーキ屋さんは駄菓子屋のようなもの。子どもたちには駄菓子を買う感覚で来てほしい」と、お値段もお手頃です。定番のお菓子に加えて、季節ごとにマイナーチェンジするババなども楽しみのひとつ。市外から買いに訪れる人も多い、スイーツファン注目の一軒です。
新井さんが惚れこむ逸品は……
「神戸北野ホテルがプロデュースする『イグレックプリュス+』の元シェフが、今年7月に『パティスリーエトネ』をオープンしました。こちらのスフレフロマージュは、一見、どこにでもあるようなお菓子ですが、食感がよくチーズの味も効いていて、驚くほどクオリティが高い。チーズケーキってこんなに美味しくなるのか!と感動しました。誰もが知っている定番のお菓子をこれだけ美味しく作れるのは、高い技術力と豊富な知識があるからこそ。勉強になります」