毎日、何げなく入っているお風呂の知られざるメリットやキホン的な入浴方法、目的別の入浴術などをご紹介します。最近は、快眠に導くための方法として入浴が注目され、睡眠で悩む方に入浴をすすめるドクターも多いのだとか。今回は、お風呂博士としてテレビや雑誌で活躍するバスクリンの石川さんにお話を伺いました。
お風呂博士 石川 泰弘さん
株式会社バスクリンの広報責任者、博士(スポーツ健康科学)。温泉入浴指導員、睡眠改善インストラクターの資格も持ち、 “お風呂博士”としてテレビや雑誌などのメディアに登場。入浴と健康・スポーツとの関わり、効果的な入浴法などをテーマに、全国各地で講演会も実施しているほか、著書に『お風呂の達人』『健康美人になる入浴術26』などがある。
ちゃんと入浴してぐっすり眠り、しっかり疲れをとることは、明日の大切な準備です。「1日はお風呂から始まる」そんなアクティブな考え方で入浴してはいかがでしょうか。
入浴して体温が上がり、血の巡りがよくなれば、栄養や酸素が体中に行きわたって疲れがとれやすくなります。人間は、体温が37℃くらいのときに最も体が機能し、免疫力を高められます。さらに、入浴には大きく以下の3つの作用があり、さまざまな効果が期待できるのです。
●温熱作用
体温が上がると血管が広がり、血液の循環が促され、コリをほぐしたり、疲れがとれやすくなるほか、自律神経をコントロールする作用もあります。
●水圧作用
お風呂の水圧で腰回りが3〜6cm細くなることも。水圧によって足にたまった血液が押し戻され、血液循環がよくなります。また、腹部への水圧によって心肺機能を高める効果も期待できます。
●浮力作用
お風呂の中で浮力が生じ、体重は約1/9程度になります。体が浮くことで、筋肉や関節の負担を和らげられ、リラックスすることができます。
一番大切なことは、気持ちよく安全に入浴することです。入浴時間は体調に大きく左右され、急に汗が出てきたり、心臓がドキドキしたり、しんどさを感じたら浴槽から出るようにしましょう。
ひとつ注意しておきたいのは、「温まる=温まり感」ではないこと。たとえば、熱いお風呂に入ると、短時間でしんどくなり、すぐに上がってしまいがちですが、そのときは温まった感があるものの、すぐに冷めてしまいます。
42℃のお湯に3分間浸かるよりも、40℃で15分浸かるほうが体は温まり、効果的です。血液はだいたい1分間で体を1周します。つまり、3分=3周よりも15分=15周のほうが血液がしっかり循環し、疲れがとれやすくなるのです。
また、週末だけ浴槽に浸かる方がいますが、毎日ちゃんと入浴して血液を循環させ、しっかり眠るというリズムをつくることが大切。特に冷え症や眠りでお困りの方は、毎日入浴を続けることで体質改善につながっていきます。
●入浴時間
目的・体調・季節によって変わりますが、おおよそ10〜15分が目安。額にうっすら汗をかくと体が温まったサインです。
●お湯の温度
39〜40℃がキホン的な温度。ただし、心地よさを感じられることが一番大切なので、好みの温度に調整しましょう。
また、疲労を回復したいときには温度を少し高めにしたり、目的に応じて変わります。
●お湯の量
肩までしっかり浸かる全身浴がキホンです。半身浴を楽しむなら、まずはしっかり肩まで浸かって体を温めてから。
入浴前の水分補給がとても重要。入浴中に約500mlの汗をかくといわれ、お風呂で脱水症状になるのを防ぐためです。特に冬場は、水分補給が減ってしまいがちになるので、注意してください。水分は、水かお茶を。ジュースは、糖分が多く、体内への吸収に時間がかかるのでおすすめできません。入浴後も水分の補給を忘れないようにしましょう。
また、入浴すると皮脂が落ちて乾燥しやすくなります。お風呂上がりは肌が潤っていても、5〜10分で乾燥していくため、お風呂から出たら10分以内にスキンケアを行ってください。
入浴の効果を高める入浴剤は、さまざまな商品が販売されています。どれを選ぶか迷ったときには、商品の裏をチェックしてみましょう。大手メーカーの商品は、「効能効果」の欄に2つ以上の項目が書かれており、その入浴剤の特徴を示しています。しかし、メーカーはその商品で最も訴求したい「効能効果」を一番初めに書く傾向にあります。
また、入浴剤を入れたお湯の“ピリピリした感覚”が嫌という方は、うま味調味料を入れてみてください。ピリピリの原因は塩素で、入浴剤の中には塩素除去のために、L-グルタミン酸ナトリウム(うま味調味料の主成分)やビタミンCが入っています。
温泉ミネラルを含んだ入浴剤など多彩な商品がありますが、今の主流は、肩コリや腰痛の方におすすめの炭酸ガス系の入浴剤です。本記事の最後で目的ごとのおすすめ入浴剤をご紹介します。
眠りでお困りの方は、入浴しない方が多く、睡眠改善の手段として入浴が注目されています。ぐっすり眠るためには、スムーズに体温を下げることが不可欠。入浴すると体温が一時的に上がりますが、血管が広がり、血液循環がよくなることで、体の熱を放出しやすくなってスムーズに体温を下げることができます。体温のスムーズな低下が快眠へと導いてくれます。
快適な睡眠のために、入浴は就寝1〜2時間前までに済ませ、お湯の温度にも注意してください。熱いお湯に浸かると、交感神経が優位に働き脳が活動的になって眠りにくくなります。
風邪などで入浴できないときは、洗面器にお湯を張って手のひらを温める「手浴」がおすすめ。手は心臓に近く、温まった血液が心臓に運ばれ、全身に行きわたり、体を温めることができます。
冷え症の方は、40℃のお湯に20分間ゆっくり浸かりましょう。まず最初の5分は全身浴でしっかり温めます。残りの15分は半身浴で浸かりながら、足の指を「グー・パー・グー・パー」と動かしてみましょう、筋肉を動かすと血液の循環がよくなり、冷え症の改善に効果的です。
また、冷え症対策には保温も欠かせません。お風呂上がりは靴下をはいて保温し、布団の中で足が温まったら脱いで眠りましょう。さらに温浴効果を高める入浴剤もおすすめです。冷え症には大きく2タイプあり、悩みに応じて選んでみてください。
●入浴後も指先・足先が冷える方
血行がよくないため、血液循環を促す炭酸ガス系の入浴剤がおすすめです。
●一度は温まるが、就寝時に足が冷える
保温に効果的な硫酸ナトリウムを配合した入浴剤がおすすめです。
長時間のデスクワークなどで肩コリがあるときは、少し熱めのお湯に10分間、肩までしっかり浸かりましょう。41℃のお湯で筋肉がほぐれやすくなり、肩をしっかり温めて血行を促します。
湯船に浸かりながら、腕を伸ばしたり、肩を回したり、肩こう骨をしっかり動かすのも効果的。肩コリが気になるときは、保温と血行を促進してくれる硫酸ナトリウムの入った入浴剤もおすすめです。
また、眼の疲れには、温まったタオルや手を眼に当ててみましょう。かなり肉体が疲労しているときは、炭酸ガス系の入浴剤を。温浴効果を高めて血流循環を促進する効果があります。炭酸ガス系の入浴剤は、泡がなくなってガスがお湯に溶け終わった状態が最も効果を発揮し、最低2時間は効果が期待できます。
立ち仕事などで足の疲れやストレスを感じたら、39℃(冬場は40℃)のお湯に15分ほど浸かります。最初の5分は、全身浴で浮力を感じながらリラックスしてください。残りの10分は半身浴で、足の疲れをほぐします。
入浴中に、鼻からゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐き出す「腹式呼吸」を行えば、副交感神経が優位に働き、リラックス効果が高まります。
また、ストレスの解消には「香り」のある入浴剤がおすすめ。柑橘系の香りは気分をリラックスさせてくれます。
スポーツの後の体のケアは、長く湯船に浸かり、血液をたくさん循環させることがポイント。筋肉を使うと血液中に乳酸が増えます。乳酸は肝臓に運ばれるとエネルギーの源に変わり、疲労回復につながります。そのため、いかに血液循環させて乳酸を肝臓に運ぶかが大事になります。
39℃(冬場は40℃)のお湯に20分以上ゆったり浸かり、最初は全身浴で、体が温まったら半身浴へ。炭酸ガス系や血流促進効果の高い硫酸マグネシウムの入った入浴剤を使うのも効果的です。
アスリートに炭酸泉をおすすめしていて、冬季五輪でもハイパフォーマンスサポートセンターで炭酸泉を用意しているほか、高濃度の炭酸ガスを発生させる入浴剤も現地に持って行っているほどです。
乾燥して肌がかゆいときや肌あれが気になるときは、40℃のお湯に5分程度と入浴時間を短くします。熱いお湯や長時間の入浴によって皮脂が落ちて、より乾燥しやすくなるからです。
お肌のケアでおすすめなのが保湿効果のある乳液タイプの入浴剤。湯船に浸かるだけで、普段は手が届かない背中のスキンケアを簡単に行えます。
また、便秘のときは39℃(冬場は40℃)のお湯に20分間浸かりましょう。体が冷え、腸の動きが鈍くなっているので、長くお湯に浸かって体温を上げて、腸の働きを促します。入浴しながらおへその周りをマッサージしたり、入浴前後に炭酸水を飲んで、腸に刺激を与えるのもよいでしょう。
温泉成分をたっぷり配合した炭酸ガスの発泡入浴剤「きき湯」シリーズ。アロマリズムは、専門の調香師が厳選してブレンドした本格的なアロマをお風呂で気軽に楽しむことができ、長時間にわたって香りを堪能できる工夫も。ネロリの香りは睡眠によい香りといわれ、リラックスしたいときに最適。また、炭酸ガスが血の巡りをよくし、保温効果もあるので冷え症の方にもおすすめです。
濃厚な炭酸湯にジンジャー末(有効成分)・温泉ミネラル(有効成分:硫酸ナトリウム)を配合した、炭酸ガスを多く発生させる入浴剤です。温浴効果を高めて血流循環を促進し、疲労回復を促します。体を芯まで温めて、入浴後の温まり感が続きます。中でもグレープフルーツの香りは疲労回復したいときに、レモングラスの香りはリラックスしたいときにおすすめです。
生薬有効成分(甘草エキス、ショウブエキス)やうるおい保護成分として「べにふうき茶エキス」などを配合し、カサカサ肌をケアする薬用入浴液。「薬用ソフレ 濃厚しっとり入浴液」は、クリームオイルを配合し、肌のしっとり感が入浴後も続きます。また、やさしくお肌をケアする新タイプ「薬用ソフレ スキンケア入浴液」は、赤ちゃんとのお風呂にも使えます。